大判例

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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)15131号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一般に裁判上の自白とは「自己に不利益な相手方の主張事実を真実なりとする観念表示である」といわれており、「ここに所謂自己に不利益な事実とは相手方が立証責任を負うている事実を意味する」と解されている。そして裁判上の自白の当事者に対する拘束力は、自白者についてのみ認めるべきであり、自白者の相手方は、禁反言の見地から特に主張の撤回を行なうことが許されない場合あるいは当事者間に争いがない事実が当事者双方についてそれぞれ自白としての意味を有する場合等特殊な場合を除き、自白された事実に反する事実を、自白取消の条件を具えていなくとも、自由に主張しうるものと解される。ところで、本件記録によれば、被告は本件第一回口頭弁論期日において、原告主張の協定上の債務の存在を肯定しつつ、(1)富士瓦斯が原告から小型蒸気ボイラーを買入れたところ、(2)右ボイラーに隠れた瑕疵があつたことにより富士瓦斯が損害を受けたためその損害の賠償を原告に請求しうるので、(3)保証人である被告において主債務者である富士瓦斯の右損害賠償請求権を自働債権として、右協定上の債務のうちの被告の保証債務金五七万円とその対当額で相殺する旨の意思表示をしたこと、これに対し原告が本件第四回口頭弁論期日で右(1)の主張をあらため、富士瓦斯ではなく、その代表取締役である被告個人が原告から右小型蒸気ボイラー(ただし、この売買物件についても多少訂正された)を買入れた旨主張し、これに伴い損害賠償債権の主体および自働債権について修正をし、その後受働債権の範囲を拡張したことが明らかである。すなわち、右各事実にみられるとおり、右(1)ないし(3)の主張事実は相手方たる被告が立証責任を負つている抗弁事実であり、その一部である(1)の事実を認めた原告は、この部分についての自白者たる立場に立つわけである。したがつて前記のような特殊な場合にあたるものとは認められない本件において、自白者の相手方たる被告は(1)の主張を前記のとおり撤回することができるというべきである。(1)の主張中、買主を富士瓦斯とする部分を、原告においてこれを自白した後、被告において撤回することは、いわゆる自白の撤回にあたり許されないとする趣旨の原告の主張は、理由がなく採用し難い。(萩原直三)

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